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スポーツ種目別の注意点
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水泳

水 泳 swimming
 水の中での運動となるため、水分を補給することを怠りがちな種目です。しかし、水泳時には相当量の発汗が起こっているものと考えられ、それは、体重減少として如実にあらわれてきます。
 よって、水分補給をする重要性はとても高いものと思います。ただ、その行ない方には、様々な注意点、効果的にするポイントなどが考えられます。
 
 特徴
 水泳の特徴
@ 熱中症などの可能性
 水中での運動をしている限り、熱中症の発症可能性はとても低いものと考えられます。
 ただし、陸上で補強運動などが行なわれる場合(ランニングなど)は、通常の運動時と同様な注意が必要となります。
 
A 水温による影響
 熱伝導率が空気中とは異なるため、体温が喪失される程度が大きいものと考えられます(水温の程度にも左右)。
 
B 発汗について
 運動中、相当量の発汗が起こっていると推測されます。
 発汗の状態を観察することはではないので、体重の変化に注意し、それに応じた水分補給が必要です。
 
C 環境について
 室内プールなどでは気温、湿度が高い。また、屋外においては、気温、水温などの変化が大きいものと考えられます。
 
 
 水分補給
 水分補給
○ 飲み方について
 プールでの場合には、プールサイドにボトルを置き、すぐ飲むことが出来るようにするとよいでしょう。練習メニューの合間や、休憩時に自らに合った飲み方で飲むようにして下さい。
 水深が深い場合や、海などでの場合には、ボトルはなるべく小さいもので(投げ返すことができる重さと大きさ)、浮力体などをつけて沈まないようにすると良いと思います。
 
○ 飲み物の温度について
 飲み物の温度は冷たいものより、多少冷たいという程度が目安となります。
 熱伝導率の違いにより、水中では空気中に比べ、体温を喪失する程度が大きいものです。よって、生理機能(恒常性)の維持のため、体内の血液の流れは体表面にある筋肉へと集中され、発熱を起こすようになると推測されます。
 よって、飲み物によって、体温を冷やすという作業はあまり必要がなく(状況による)、冷たいものでなくともよいと考えます。
 
○ 量について
 運動の合間にとる水分補給のときには、1回に飲む量を一口程度以下が目安になるでしょう。また、それに応じて(運動の強度、量にもよる)、飲む回数を多く取ることによって、補給量の減少を防ぐことをするべきでしょう。
 一度に多量に飲むと胃ケイレンや下痢を起こす可能性がありますので、注意が必要です。
 理由は、体温維持のため、消化吸収機能が最低限のレベルまで低下していることが推測されるためです。
 
○ 飲み物の種類(質)について
 水の影響により、体力を消耗する程度は大きいものと考えられます。また、通常、長時間にわたる運動が行なわれるために疲労すること、またその質の問題も考えられます。
 よって、効果的な水分(栄養)補給によって、集中力の維持、疲労の軽減と回復、様々なストレスに対する抵抗力を保つことを狙うことが考えられます。
 水分補給の内容に、糖質、ミネラル、ビタミン、クエン酸、アミノ酸などのものを加えたものとすることが考えられます。
 具体的には、スポーツドリンクを2倍希釈以上に薄めたものがすすめられます。通常の濃度では、消化吸収が難しいものと思います。

◇ 糖質について
 インシュリン濃度を上げないようなものが良いでしょう。よって、果糖(フラクトース)、オリゴ糖(デキストリン)などが良く、砂糖、人工甘味料などは避けるべきと思います。
◇ ビタミンについて
 特にビタミンCを十分に取る必要があります。効果としては、ストレスに対する抵抗力を保つことが期待されます。
◇ クエン酸について
 速やかな疲労回復が期待されます。運動終了後においてとることが特に効果的と思われます。
◇ アミノ酸について
 アミノ酸のうち必須アミノ酸と呼ばれるものには、様々な効果が期待できます。配合の仕方により、スタミナの維持、集中力の維持などが期待されるもの、また、速やかな疲労回復が期待されるものがあります。
 
○ 長時間にわたる水泳時
 2〜3時間以上にわたって、運動が行なわれる場合には、エネルギー補給の必要性が起こってきます。通常の水分補給の際のものでは足りなくなってくることも考えられます。
 内容的には、糖質を中心としたもので、その糖質は運動を阻害するインシュリン濃度を上げさせないものであり、消化吸収の効率がとても高いものが望まれます。
 ゼリー飲料、バナナ、お粥などより、自分にあったものとするとよいでしょう。糖質としては、デキストリン、マルトデキストリン(コーンスターチを酵素分解したもの)などが適していると思います。
 エネルギー補給の仕方としては、水分補給とは別に考えて、30分〜1時間毎を目安に、自らにあったタイミングと量で行なっていくようにするとよいでしょう。
 
 その他(下痢による脱水について)
 水泳時においては、下痢を起こすことも多いと思われます。下痢をすると、体の中の水分や電解質(ミネラル)が喪失されてしまい、脱水状態となってしまいます。また、その脱水状態のままで運動をすることは、大変に危険なことです。
 手当としては、水分補給をかかさないことが第一となりますが、以下のような飲み物を飲むことも有効と思われます。
 
 下痢による脱水症の経口輸液  中島(1997)
Nacl
NaHCO3
KCl
グルコース
温湯
茶さじ1/2杯
茶さじ1/2杯
茶さじ1/4杯
食卓用大さじ2杯
 
 難しい場合には、飲みやすい程度に温かいスポーツドリンク(通常濃度よりも濃いもの)がよいと思います。ホットで飲むタイプのものもあります。
 一度に大量に飲まず、時間をかけて少しずつゆっくり飲むとよいでしょう。
 
 
 参考資料
清原伸彦ほか6名(1986) 低水温水泳時の体温保持に関する調査
日本体育大学紀要 15(2) 21-26

日本水泳連盟科学技術委員会(1987) 水泳医学入門

高橋弘彦ほか3名(1995) 遠泳時の生体反応に関する調査
仙台大学紀要 26 7-16

高橋弘彦ほか3名(1996) 遠泳時の生体反応に関する調査(2)
仙台大学紀要 27 43-51

中島豊ほか1名(1997) 下痢と嘔吐による脱水症
治療 81(7) 44-55
 
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