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事故の事例()
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jump!  事故当時の気象状況
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jump!  事故に至る経過
jump!  練習内容及びMの行動
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私立高校一年生のサッカー部員が
夏季合宿で急性腎不全となり死亡した事故
 事故発生年月日
 1984(昭和59)年8月27日
 
 発症者の経歴等
 私立高校の一年生M(16歳、男)。
小学校六年から中学一年のときまでサッカー部に所属していた。
 昭和59年4月、K高校に入学後、19日にK高校サッカー部に入部した。健康体であったが、動作に緩慢さが見られ、運動能力、基礎体力が標準より劣っていた。性格については、努力家であり、疲れても自分からは休憩を積極的にはとろうとしない。練習中に疲れても表情が変わらない。人前では過度に緊張し、自己主張が出来ず、特に先輩に対してはしどろもどろになる。
 一学期のサッカー部の練習時間は、15時30分から17時30分までの2時間程度。7月23日から一ヶ月間の夏休みとなっており、その間、8月中旬(合宿の一週間程前)に3日間程度、一日2時間程度の練習を行なったのみ。
 
 事故発生場所及び状況
 K高校
  
 事故当時の気象状況
  K市 T町
日時 天気
概況
気温
湿度
風向
16方位
風速
m/s
雲量
10分比
日射
0.1h
気温
風向
16方位
風速
m/s
日射
0.1h
8/27 09:00
時々

一時
雷雨
29.5 67 NNE 2.8 10 0.2 30.4 SSW 3 1.0
10:00 - - - - - 0.4 31.0 SW 3 1.0
11:00 - - - - - 0.7 31.6 WSW 3 1.0
12:00 28.8 76 W 3.7 - 0.8 32.5 WSW 3 1.0
最高(大)   34.8 - - 7.1 - - - - - -
最低(小)   25.6 48 - - - - - - - -
 
 事故日までの気象状況
天気概況
06-18時
天気概況
18-06時
気温

平均
気温

最高
気温

最低
湿度

平均
湿度<

最小
風向
16方位
風速
m/s
平均
風速
m/s
最大
 K府K市
8/20 30.3 35.3 59 ENE 2.7 5.6
8/21 28.4 32.8 77 ESE 1.9 4.1
8/22 曇時々雨 26.3 28.7 78 SSW 2.0 4.6
8/23 26.5 32.4 66 N 1.8 4.5
8/24 27.3 33.5 61 ENE 1.8 3.8
8/25 27.4 30.5 69 ENE 2.9 4.7
8/25 晴時々曇 28.4 31.8 67 ESE 2.7 5.0
8/27 曇時々晴一時雷 27.8 34.8 77 NNW 1.6 7.1
   
 事故に至る経過
 発症者Mは、昭和59年8月26日から31日まで行なわれる、K高校での合宿に参加。
 合宿には、顧問のH教諭とT教諭の2名とコーチSの付添・指導のもとに実施された。なお、T教諭はサッカーの経験がなく、H教諭は中学一年から二年の夏までサッカー部に在籍した経験がある。Sコーチは、高校のサッカー部を卒業後大学に在籍している大学生で、同年6月よりコーチとして実技指導を束ねていた。
 Sコーチは、この合宿の目的を全国高校サッカー選手権都道府県予選ベスト8に残ることとおいていた。(当時のK高校サッカー部の実力は予選の一回戦を勝てるかどうかのもの)
 
 練習計画内容
 時間  内容
6時00分 起床
6時30分〜7時00分 早朝練習
8時00分 朝食
9時30分〜12時00分 午前の練習
12時30分 昼食
14時30〜18時00分 午後の練習
18時30分〜20時00分 夕食および入浴
20時15分〜22時00分 ミーティング
23時00分 消灯
参加生徒の学年・基礎体力・運動能力・サッカー経験などの差異に関らず
全員一律の練習メニュー、合宿スケジュールで行なわれた

生徒から休憩の申告があった場合には拒否されたことはなかった
給水は、練習時でも運動場に敷設された水飲み場で自由にとらせていた

顧問教諭らは、Mが運動能力及び基礎体力が他より劣ること
及び疲れても無理をして練習に参加することから
他の虚弱な感じの生徒4名らとともにMに対しては
この合宿を行なうに際して、特に健康状態に注意を向けることにしていた
 
 練習内容およびMの行動
 8月26日
11:00 合宿開始
11:30 発症者M参加
  参加者全員が集合した時点で
合宿中の一般的な健康管理の指導
  午後より練習開始
インサイド・パス
パス&ランニング
四種目の練習をし、ボールを蹴りながら
グランド半面を3周する
ミニ・ゲーム(グランド半面で20分ずつを3回)
グランド半面をリレー形式で走るなどの練習
  夕食
20:15
-22:00
ミーティング
23:00 消灯、Mはミーティングが終わると逸早く就寝した
8月27日
06:30
-06:40
グランド半面を10周するジョギング
リフティング
07:10 朝食
09:30
-12:00
インサイド・パスを50本
ロング・パス5往復
ポスト・シュート
ジクザグ・パス
3箇所センタリング・シュート
ドリブル・シュートなどの練習
Mは、ロング・パス練習中に前方に走らなくてはならないの、後方に戻ってしまうなどの行動し、疲労を顕著に顕していた。
そして、用便中、放尿をしていたとき、突然の意識を喪失し、もがき苦しみながら無意識に草をむしりとって口に入れたり、理由なく、コンクリート壁に頭を打ち付けたり、意味なく失笑したり等の異常行動を行なった。
そのため、サッカー部キャプテンに意識喪失と異常行動の話をした上、Sコーチに休憩する旨の伝言を頼んだ。その後、体育館横からグランドへ降りる階段のところで、休憩をとった。
二年生の1名が、便秘を訴え、また疲労が見えたので、顧問教諭が見学を命じた。
  昼食
H教諭はMらと一に食事をしたが、健康状態を尋ねるようなことは無かった。
14:30頃 軽いランニングと体操
インサイド・パス
ロング・パス
ポスト+バック等の練習
Mは午後の練習には参加しなかった
(教室で寝ていたり、見学していたりした)
16:00頃 雷雨となったので体育館および校舎内の廊下で30mダッシュ
ウェイト・トレーニングなどの練習
Mは、雨が上がった後のグランド整備には参加したが
他の部員と比べて幾分苦しそうな様子だった
T教諭から体調を尋ねられ、Mは「大丈夫です」と答えている。
  入浴後、ミーティングが1時間ないし1時間半行なわれた
顧問教諭はMに、体調等を尋ねることは無かった。
 8月28日
  Mは早朝練習、練習試合前のウォーム・アップ練習には参加したが途中から休憩した。
  T高校、M高校との練習試合
Mは見学。
  試合後の1時間半ほどの練習にMは参加
その際、転がってくるボールにはいつくばるように、ヘディングをしたりした後、グランド中央に座り込んでしまう。
Sコーチに「大丈夫か。少し休んでおけ。」言われ、介添えを得て階段ところで休憩した
キャプテンは、Mが27日に意識喪失、異常行動をとったこと、かなり疲労していたことを、Sコーチに報告したが、Mをそのまま練習に参加させた。
  この日からMの尿回数は一日当たり3回に減り、軽いアンモニア臭の発散等の症状が現れ、他の生徒の中にもMの異常な容態に気づく者がおり、話題になっていた。
 8月29日
  Mは27日におこした靴擦れがひどく、終日靴の踵を踏んでいた。
Sコーチは「足が動かなかったら、止めて休んでおけ。」と命じたのでMは見学した。H教諭は、朝に疲労を訴えて、教室で寝ていた一年生と、足の爪を怪我した二年生を、自家用車に乗せて病院に搬送した。
 8月30日
  Mは早朝練習に参加
  H教諭は朝食の際、食堂に向うMがふらついて、まっすぐに歩けない状態であることに気付いた。
Mの額に手を当てて熱を測ったところ、かなりの発熱を感じた。
H教諭は、その際に、Mから27日の意識喪失と、異常行動のことを聞いた。
09:30頃 朝食後、H教諭はMを保健室のベットで休ませていた。
出勤してきた養護教諭と相談の上、救急車を呼んでW病院に搬送した。
09:55 W病院に到着
  脳神経外科医のW1は、問診による意識レベルの検査、瞳孔、三叉神経、腱反射等の神経学検査、頭部エックス線検査をした。結果、器質的障害などの異常は認められず、頭部外傷(打撲)と意識喪失および発熱は関係ないと判断した。
  内科医W2は、Mの発熱の原因を、風邪及び脱水ではないかと思い、肺と心臓の聴診、眼球結膜の視診、腹部及び 骨の触診及び腱反射の検査、血液検査をした。
 Mに、日射病による軽い脱水症状、疲労及び急性上気道炎との診断。
ビタミン・抗生物質の点滴を2時間かけて行なった後、3日後に外来で来るように顧問教諭に言い、3日分の急性上気道炎の内科薬を処方した。
この際、Mを入院はさせなかった。
15:00過ぎ H教諭はタクシーでMを学校に連れて帰り、クーラーを入れた保健室で休ませた。
17:00過ぎ頃 H教諭はMの母親に、Mの合宿中での経緯を話し、迎えに来てもらいたい旨の連絡を入れた。
18:30頃 Mの母親が学校に到着。
Mに会うと、唇が粉を吹いたように真っ白だった。
教諭に挨拶の後、自家用車で急遽帰宅した。
  帰宅後、Mには嘔気があり、食欲は無く、体温は38.3℃。
その夜に排尿をしたが、黒褐色色だった。
 8月31日〜9月9日
  Mの母親が別の病院で診察を受けさせたところ、即日入院となり、検査の結果、急性乏尿性腎不全と診断。
血液透析を数回にわたって受けた。
 9月9日
19:13 脳浮腫(脳ヘルニア)による呼吸抑制および心不全の増強を直接の死因として死亡した。
時刻
(練習時間)
内容
Mの状態、教諭の対応など
 出典
平成6年6月29日 大阪高等裁判所 判決 平成4年(ネ)第1591号
損害賠償請求控訴、同付帯控訴事件 取消・請求棄却、付帯控訴棄却 上告
判例時報1517号62項

原審
平成4年6月26日 京都地方裁判所 判決 昭和61年(ワ)第591号
損害賠償請求事件 認容 控訴
判例時報1463号127項
 
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