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事故の事例(相撲)
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jump!  事故発生年月日
jump!  発症者の経歴等
jump!  事故発生場所及び状況
jump!  事故当時の気象状況
jump!  事故日までの気象状況
jump!  事故に至る経過
jump!  練習内容及びKの行動
jump!  出典

県立高校一年生の相撲部員が
他校との合同合宿に参加して訓練中
熱中症に罹患して死亡した事故
 事故発生年月日
 1986(昭和61)年8月7日
 
 事故者の経歴等
 県立F高校一年生のK(16歳、男性)。小学校4年生の時より相撲を始める。
高校入学後に相撲部に入部、相撲部は三年生4名、二年生2名、一年生がKを含め2名で構成。
 二、三年生は試合に出るだけで、K以外の一年生は退部を申し出ており、平素はKが1人で練習することが多い状況。
 クラブは週2、3日、一回の練習時間は1、2時間程度。
 
 事故発生場所及び状況
  県立T高校にある屋内相撲場。

三方に窓、残る一方に出入口がある(うち二方の窓は開閉ができないので開閉できる窓は一つのみ)。
 道場の南側に川が流れているが、窓及び出入口はさほど大きくなく、通気が特に良いとは考えられない。
  
 事故当時の気象状況
    C県T市  C県K市
日時 天気
概況
気温
湿度
風向
16方位
風速
m/s
日射
0.1h
雲量
10分比
気温
風向
16方位
風速
m/s
日射
0.1h
8/ 7 12:00 29.7 - NW 3.9 1.0 - 30.2 NNW 2 1.0
12:30 29.9 - - 2.9 - - - - - -
13:00 31.0 60 WSW 2.4 1.0 - 30.9 NW 2 1.0
14:00 30.9 55 SW 2.6 1.0 - 31.8 SSW 3 1.0
15:00 30.7 54 SSE 2.9 1.0 00+ 31.0 SSW 4 1.0
16:00 29.7 58 SSE 3.3 1.0 - 30.2 SSW 3 0.7
平均   26.6 75  WNW 1.7              
最高(大)   31.2 - WNW 4.1 - - - - - -
最低(小)   22.0 53 - - - - - - - -
 
 事故日までの気象状況
天気概況
06-18時
天気概況
18-06時
気温

平均
気温

最高
気温

最低
湿度

平均
湿度

最小
風向
16方位
風速
m/s
平均
風速
m/s
最大
 C県K市
8/ 1 晴後曇 27.0 32.4 239 77 55 ESE 3.4 7.1
8/ 2 曇一時
雷雨
後晴
晴一時曇 24.8 29.4 22.3 79 63 E 3.8 6.5
8/ 3 薄曇 曇後雨 25.4 30.1 22.3 75 49 ESE 4.5 7.2
8/ 4 大雨 大雨 21.7 26.4 19.3 93 82 SE 6.2 11.8
8/ 5 快晴 26.9 33.6 20.1 68 41 NW 6.4 5.5
8/ 6 28.2 32.5 23.0 61 45 NNW 3.1 7.0
8/ 7 曇一時晴 曇一時晴 26.3 29.4 23.5 77 68 ESE 3.7 6.9
 C県T市
8/ 7 晴後曇
一時雨
26.6 34.2 22.0 75 53 WNW 1.7 4.1
 
 事故に至る経過
 発症者Kは、昭和61年8月7日に別の高校(T高校)で行なわれる合同合宿(T高校、N高校等)に相撲部顧問のS教諭に引率され、参加した。
 その際Kは昼食を取っておらず、また、稽古中も塩分・水分の補給を行なっていない。
 
 練習内容およびKの行動
 8月 7日
12:30頃 T高校到着。合宿参加(F高校よりの参加生徒はKのみ)。
  四股踏み100回(T高校相撲部道場の外側校庭において)。
摺り足(道場内において)。
高校生3人、中学生7人との勝抜戦。
高校生Nとの十番勝負(同じ相手と10回の相撲を行なうこと)。
大学生1人を相手にした5、6回の十番勝負。
合宿所内の炊事場に氷を取りにゆく。
(稽古相手Nの頭を冷やすため)
四股踏み(整理運動として)30回。
Kの足が十分に上がらず、足元がふらつく。
腰割(10回)を開始。Kは途中で止めようとする。
引率教諭Sは続けて行なうよう指示したが、再度途中で止めて土俵の外に出ようとする。
S教諭が制止すると、尻餅をつくように寝転んでしまう。
T高校教諭Y(相撲部顧問)が、注意のため、Kを道場の上がり座敷に呼ぶ。
Kは起き上がり、Y教諭によろけるように近づき、上がり座敷に手をついて、Y教諭に寄り掛かるように、腰から座り込むように寝てしまい、更に唾をたらす。
S教諭は、Kが稽古を嫌がり、駄々をこねていると判断するが、そのまま寝かせておいた。
13:30頃 他校の練習が終わり、掃除のためにS教諭がKを起き上がらせ、道場から連れ出そうとした際に、Kは道場入り口付近からグラウンドへ突然走り出し、ネット裏付近で倒れる。
S教諭は、バケツ半分くらいの水をKを顔にかけた後、日向のグラウンドにそのまま暫く寝かせておく。
14:00頃 Y教諭が「いつまでもそこに寝かせておいてもしょうがない。日陰に入れなさい。」と言ったので、日陰になっている体育館北側のコンクリートのたたきに連れていき、寝かせて、回復を待つ。
15:40頃 S教諭はKに声を掛けたが、Kは嘔吐し、まわしを取ってみると、両手に一杯程度の下痢上の脱糞をしていた。(Kは下痢をしていたものと推測される)
S教諭は、T高校の生徒2人とKの肩を支えてシャワー室に連れて行き、Kの体を洗う。
その際にも、Kは前回の半分程度の脱糞をする。
S教諭はY教諭と相談して、T高校近くのT診療所に診察してもらおうとしたが、その場にいた生徒から休診日と聞いた。
16:00頃 Y教諭はG病院に電話したところ、休診時間中なので折り返し連絡するとのこと、その後、病院から至急連れてくるようにと連絡があった。
16:40頃 Y教諭が救急車を要請。
17:11頃 Kは同乗したS教諭とともに救急車で、G病院に到着。
到着時の状態は、意識が全く無く、全身性痙攣、高血圧(96/50)、高体温(腋下温39.9℃)、頻脈(164)であった。
20:00
ないし
22:00頃
血圧が上がり始め、脈拍も安定しだし、尿も出始めた。口が渇いたのでので、ジュースが飲みたいと言い、母親が分かる程度の意識状態にまでなった。
 8月 8日
03:00頃 いびきをかき始める。
03:10頃 多量の吐血。
03:20頃 心停止の状態となる。
04:02 Kは急性心不全により死亡。
時刻 内容

 出典
平成6年10月26日 東京高等裁判所 判決 平成3年(ネ)第768号
損害賠償請求控訴事件 控訴棄却 確定
判例時報1407号108項
判例タイムズ888号170項
原審 平成3年3月6日 千葉地方裁判所 昭和62年(ワ)第199号
損害賠償請求事件 一部認容 控訴
判例タイムズ757号142項
 
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